予約も取れないし、パビリオンには大行列。結局何をしたらええの、と途方に暮れる大阪万博であるが、答えは簡単、スタンプラリーをするのである。だだっぴろい会場に全部で200個くらいあるらしいのでやり始めたら実際コレクション欲がくすぐられて、会場にいる子供たちもめっちゃ楽しそうにやっている。ポケモンなんかでやっているあれである。
パビリオンに入らないと押せないやつもあるけれど、入らなくても会場外にスタンプ台が置かれている所もけっこうあるので、実際何個くらい集められるのかはわからないけど炎天下「何をすればええんや」と子供と共に途方に暮れていてもしゃあないので、やらない手はない、子供を連れてきたのならスタンプ戦線には参加すべきである。で、こういう話を聞くと、知らない人はまず公式ショップで(スタンプを押すための)スタンプパスポートを、となるだろう。
私は初め、何を勘違いしたのか一冊200円だと思い込み、自分のぶんと子供のぶんの2冊買おうとしたら、レジで提示された値段は2200円である。あ、ほんまや、一冊1100円って書いてる……、200円ってのは公式マップであった。スタンプパスポートは一冊1100円である。考えが甘かった。でも子供の前で、今さら引き下がれない……半歩だけ引き下がろう……と、結局わたしは2冊買うのをやめて1冊だけ買ったのだが、ここで言いたいのは値段の話ではないのだ。万博グッズがいちいち高いとか、そんなんは人それぞれの金銭感覚で違うから、値段に文句を言うような野暮なことはしない。それにスタンプパスポート、買ったら買ったでまあ(1100円だけど)ええもんである。丈夫なつくりだしかわいらしい。でも……
子供に使わせて思ったのだが、これは万博に何度も来れるガチ勢用のアイテムだと思った。
なぜかというと、全部で70ページくらいある立派なパスポートであるが、スタンプを押す位置がエリアごと(全8エリア)にわけられており、おまけにエリアE、エリアW、エリアXについては、NTTパビリオンはここに押してね、パナソニックはここに押してね、みたいな感じで押す位置も決まっている。……と説明しても持っていない人にはなんのことやらわからないと思うが、ともかく、公式パスポートというのはスタンプを押す位置が決まっていて、スタンプが(私たちがパビリオンを訪ねた順に)直列に並んでいかないのである。
これは、万博に何度もたくさん行ける地元の子供とかガチ勢の人だったら何の問題もない。繰り返し訪ねるうちにだんだんだんだん時間をかけてスタンプカードが完成していく(埋まっていく)、そんなよろこびが味わえるのでめっちゃ楽しいと思う。
けれど、私がいま万博メモを書くにあたって読者として想定しているのは、夏休みなのでこれから訪ねようとしているライト層の親子である。
ほとんどの人は訪ねるのは1回だけ。多くても数回。
公式スタンプパスポートというのは、実際買ってみてわかったのだが、長い時間をかけて(何度も会場を訪ねて)育てていく種類のアイテムなのであった……。
万博会場に行ったら、(どうせ予約は取れていないと思うので)「どっかに入れるところはないかな……」と適当なパビリオンを探す。すいてる所(夜の地球とか)に入る。スタンプを押す。次はどっかに入るか……とどこかに入れたとすると、そこはまたさっきのところとエリアが違うのでスタンプを押す場所は別のページで、うんぬんかんぬん。
つまりである。残念なことに、1回とか数回しか行けない人が今からパスポートを買っても、行けるパビリオンの数には限りがあるので、(押す場所が決まっている)スタンプパスポートにはぽつん、ぽつん、ぽつん、と飛び地のようにハンコが並ぶ感じになってしまう。それはどういうことかというと、家に帰ってパスポートを眺めた時にあまりに空白が多いため、「押した」という楽しさよりも「押せなかった」というさびしさが残ってしまうのである。
これは公式スタンプパスポートそのものが悪いのではない。
ただ「公式スタンプパスポートというのは何回もたくさん通って育てていくもの」みたいなことを知らない人は多いと思うので、1回とか2回でどないかなるものじゃないですよ、みたいなことは知っておいたほうがいいと思う。
それで、じゃあ何回も行けない人はどうすりゃええの、ていう話ですが、答えは簡単、自分のノートとか絵はがきとかにハンコを押していけばいいのである。実際うちの場合も公式スタンプパスポートは(このままではやはり、「押した」という楽しさよりも「押せなかった」というせつなさが残ってしまう)と判断した私は、パスポートは私が使い、子供にはノートを使わせることにした。
そうすると子供は好きな場所に好きなように(重ねたり、何個も押したりして)スタンプが押せるし、行った順に、エリアとか関係なくスタンプを直列に並べて、たとえ数個であったとしても、家に帰ってから「やった!」と楽しい感じに万博をふり返ることができるのであった。