むかし歩いて日本一周しようと思ったことがある。十代の頃は何かにつけて自信があったので、ひたすら歩く事くらいたやすいものよ、と考えたのである。リュックに着替えだけを詰め、寝袋かかえて家を出た。そして三時間、四時間、五時間六時間と歩き続ける中で、はじめてというか改めて、自分が感動的なまでに方向音痴であることを認識した。一日かからずに歩ける距離、大阪から兵庫まで行くのに四日かかったのである。そしてこれは初日に骨の髄まで気付かされた事であるが、とにかく時期を間違えた。家を出たのが12月だったのである。宿をとるつもりはなかったので毎日どこかしらで野宿していたのだが、雪の日、雨の日の山間部になると、夜は寒いというよりも痛い。
ま、なんでも勉強というか、これは後日アウトドアショップの店員に教えられたのだが、どうも寝袋には種類があるらしく、ぼくの持っていたのは春夏キャンプ用の寝袋だったから、そりゃ寒さで痛くもなるはずだ。どんな経験からでも学ぶことはあるのである。ぼくはひたすらブラブラ歩いていた間に、寒い場所を野宿でやりすごす方法を学んだ。と、いっても単純なものだけど。暗くなったら早めにベストな寝所を確保する。建物と建物の間、大きな木と大きな木の間、とにかく何か大きな物にくっついておく。くしゃくしゃにした新聞紙を寝袋の中に詰めれるだけ詰める。寝袋の下にも新聞紙。あとはウイスキー。そんでやせ我慢。
……しかし結局のところ、ぼくの我慢は下関の手前までしか続かなかった。早々と日本一周はあきらめたのである。
え……?

と、いうわけでワカモノよ、何事も一度決めたら最後までやり抜かねばなりません。



