仕事が休みのある日、同僚からザリガニ釣りに行こうと誘われた。『ここから車でしばらく走ると俺の育った町があってね、神社があって、ドブ川が流れていて、小学生の頃は毎日そこででっかいザリガニを捕まえてた。タコ糸の先にさ……』スルメやろ?先っぽに結んで…『そうそう!小遣いでスルメ買って、半分は自分で食べて残りの半分でザリガニ釣って』なつかしーな。ぼくもよくやってたよ。行こう行こう。『行こう!』と、いうわけで車を走らせ20分ほど、辿りついたなつかしい町はすっかり開発されていて、ザリガニがいたドブ川はきれいに埋め立てられていた。『神社があってね、秋になると赤天狗、青天狗、黄天狗、何匹も天狗が出て俺たちを追っかけるんだ。もう、それが怖くて怖くて』という神社の、モコモコと生い茂った森を残して、周囲はすべて更地になっていた。緑が濃いな、と思った。『ずっと昔ね、ここに天狗が……』今もいるよ、絶対に。『そうかな?あそこに?』同僚が森を指さして言う。うん、いる。ほら、よく見てみろよ。もっとよく見てみろ。
