ヒカリさんと外を歩いていて、相手の髪の毛がなんらかのあれでボサっとほつれているのを見つけた時「ちょっと待って」と言って私がヒカリさんの後ろにまわり、結んでいる髪の毛をいったんほどき、髪の毛をふたたび束ねて結び直す、という作業をすることがある。時々ある。
いや、時々あると書いたがもう1年生や2年生ではないので外で共に遊ぶこともなくなって、そのような機会はめっきり減った。とはいえ、共に遊ぶことはなくなったけれど共に(犬の散歩とかで)出かける時はよくあり、(なんや、髪の毛ボサッとなってるやんけ)と発見し、結び直す、そういう機会もいまだに時々はある……というくらいの頻度である。
なくなったわけではない。たまにある。
つい最近ふと気づいたのだが(ふと気づいたと書く時の「ふと」が本当に「ふと」である確率は低いと思う。だいたいの「ふと」はただの馴れ合いで、商品にくっついてくるタグみたいに「気づいた」に半自動的にくっついてくる付属品として書かれている。しかしこの場合の「ふと」は本当の「ふと」であったと思ったのでふと気づいたと書かせてほしい)いつのまにかヒカリさんの後ろにまわって髪の毛をほどき、もう一度たばねて結び直す時に、わたしのほうがかかとを浮かせて背伸びしないとうまく結べないようになっている。以前はこんな感じではなかった。
私はただべたっと着地しているだけで後ろから気楽に髪の毛を結べたのだ。
髪の毛を結んでいるあいだはそういうことには気づかなかった。
しかしその後でみずからの行為をふりかえり「あれ?」と気づいた。
私が小さくなったのではないのだから、つまり、ヒカリさんが大きくなったのだ。
1年生や2年生の時は外で髪の毛を結び直す、という機会がたくさんあった。
当然結んでいる途中でゴムが切れてしまうこともあったので、その頃の私の手首にはいつも3本、4本、5本、6本とヘアゴムがかけられていた。
そういうのもいつのまにかなくなっていて今自分の手首にはもうゴムはかかっていない。
というくらいの頻度になったから、余計に「あれ?」というインパクトになったのだと思う。
やがて遠からず、私は何かの台にでものぼらないと、あるいはヒカリさんにどこかに座ってもらわないと髪の毛を結べなくなるのだと思う。
そして当然ながら、その頃には私が他者の髪の毛を結ぶことなんて、なくなっているのだろう。
その一件以来わたしは外でヒカリさんに「ちょっと待って」と声をかけて髪の毛を結び直している時に、あげたかかとのたよりなく宙に浮く感じを意識するようになった。「きみが勝手に大きくなるからうまいこといかんなあ」と聞こえるか聞こえないかのひとりごとを言いながら、時にフラっとなりつつ、今度こそこれが最後かも、とかかとを浮かせている。