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創業2002年か2003年、平民金子の元祖はてなダイアリー日記です。

粉瘤手術体験記

あれはいつだったか、3年とかもっと前だと思う。右胸の上部、脇のあたりに小さなしこりが出来ているのを発見し、発見するとそれが気になるのでよくさわる、いつしかそれをつまむようになる、何度かつまんでいるうちに、なんかしこりの真ん中あたりに小さな穴?みたいなのがあってそこから汁だか膿みたいなのが出て、くさ!となった。ということがあったのだが、当時いそがしかったのでそのまま放っておいた。こういう違和感は放っておいたらあかんのだが……わざわざしぼり出すようにつまんで汁だか膿?だかを出し、くさ!となる以外では生活に支障がなかったってのが放っておいた理由として大きい。

その頃からの自分のイメージとしては、なんか生活の不摂生とかで脂肪?みたいなやつがこの部分にたまっている=つまり、しこりの内部には脂肪っぽい汁がたまっている、みたいなイメージであった。だから、つまむと変な汁が出るのである。とにかく生活に支障はまったくない。

それでも何度かつまんでいるうちに、つまんでいると気になってきてまた強くつまむ、そしたら汁だか膿だかが出る、みたいなことは時々していて、ある時などは、これをつまみ(汁を出し)切ったらこのしこりはなくなるのではないか、とも考えてそれを実践してみようとしたこともあった。けれど、くさい汁が出るだけでしこり自体は変わらない。とはいえ、生活に支障はない。

あれから3年くらいか……。いろいろとたまっていた作業とかが落ち着いたので、健康診断に行ったりだとか、どうしても後回しにしてしまっていた肉体方面のあれこれに今こそ手をつけようと思い、そしたらまずは、優先順位をめっちゃ後ろにしてしまっていたこの胸のしこりであろう、というのでそこで初めてネットで検索したら、まあ自分のこのしこりは「粉瘤」なるものである可能性が高い、そんな気がして、ならば、形成外科に行けばライトな感じ(?)で手術で除去してくれるらしい。大きさにもよるが5000円〜2万円くらいの幅である。まあ、とりあえず、ということで簡単に行ける感じの場所の形成外科を訪ねた。「うん、粉瘤ですね」と言われた。「じゃあ切りましょか」「はい」「まずは血液検査を」「はい」「では手術日を決めて」「はい」と何もかもがスムーズであった。

いや、それで、手術をしてもらったのだが、何がびっくりしたって、「粉瘤」なるものが私がイメージしていた「なんか脂肪っぽい汁」みたいなものと全然違っていた。当日は局所麻酔をしてもらったらあとは何も感じず、それでもたぶん30分くらいだろうか、立派な手術をされてる感みたいなのがあった。何に対してそう感じたのかと言えば先生の時おり漏らす「フー」「……ハー」みたいな真剣な呼吸と、あとは先生のお腹がごろごろ鳴っている音である。あ、音は手術感とは関係ないかあ。これって、お腹がすいてるんかな?と最初は思ったけど、聞いているうちにたぶん昼ご飯を食べたあとの消化の音だろう、と思いなおした。そんな音を聞きながらの30分か40分くらいかな、体感だから正確な時間はわからんけど、「終わりました」と言われベッドから起き上がると、それはあった。

「これがね、出てきたやつですよ」と先生は教えてくれた。

私はすぐに「わあ。砂肝みたいですね」と言った。

そこにあるのは、私がイメージしていた脂肪の汁っぽいものではなくて、なんか白っぽい皮っぽいものに包まれたビー玉より大きい、ラグビーボール形っぽくもある、あえて何に似ているのかと言えばやっぱり砂肝である。それを見たその一瞬で私は「砂肝みたいですね」と言い、今後焼き鳥屋なんかで砂肝串を見た場合は粉瘤を思い出すだろうと思った。でも焼き鳥屋ってもう何年行ってないだろうか。一度鳥貴族っていう店に行きたくて、最近日体大のバズーカ岡田先生がYouTubeで鳥貴族にハマっている、と言っていた。岡田先生が注文するのはむね肉串の塩と、むね肉串のスパイス、らしい。そういうのを聞いていたのでますます鳥貴族に一度行ってみたいなと思っていたが全然行けていないしそもそも焼き鳥屋に行く機会がない。ないけれど、自分はこれから砂肝を見ると絶対に粉瘤を思い出すであろう。先生は「これの中にね」と言ってメスを使ってその砂肝に切れ目を入れた。そしたら、砂肝の中から餃子の餡みたいなやつが出てきた。先生が指で切れ目の入った砂肝を押すと、餃子の餡みたいなやつがニューっと出てきた。これが、においの元?みたいな脂肪のカスみたいなやつで、みたいな説明をされたかどうかの記憶がないが、まあそういうことだろうと思う。砂肝の中から餃子の餡が出てくる、そういう料理があったらつまみとしてはおもしろいけれど、自分は今後、餃子をひとくちで食べた時は問題ないけど、ふた口で食べる場合、王将なんかの大きめの餃子だと半分くらい食べて、箸でつまんだ残りの半分が視界に入るみたいな時あるじゃないですか、あの時に見える餃子の餡を見ても粉瘤を思い出すだろうと思った。とにかく、私が数年間イメージしていた胸のしこり=汁っぽいものが詰まっている、みたいな世界ではなかったのである。

ものすごくしっかりとした、コロッとした、ビー玉大くらいの、かたまり、物体が私の胸に入っていたのであった。コロッと出てきて、ボテっと置かれている、みたいなものが術後のベッドから起き上がった私の目の前にあって、そこから餃子の餡が出てきた。想像と全然違っていた。物体であった。絞り出したらなくなる、みたいなものではなくて、鳥が産んだ卵をあたためるように体の中で大切に育てていたものを皮膚を切って取り出した、という感じのものであった。コロッとしたものが、ボテっとそこにある、という物であった。料金は1万円ほどであった。