はてなダイアリー平民新聞

創業2002年か2003年、平民金子の元祖はてなダイアリー日記です。

六甲山を縦走したい!(13)

高取山を下りると菊水山方面と書かれた案内柱が立っている。菊水山のふもとまではまたしばらく町歩きが続く。須磨アルプスを下りたあとのニュータウン歩き、妙法寺周辺の古くからある町なみ歩き、そして今度は長田山側地区の、なんつうか独特の空気やなこれ……ていう。すえた源平感?あたりは狭い路地がたくさんあってややこしいので迷わないように地図アプリをちょくちょくチェックしながら進んだのだが、それゆえに途中で道を間違えていた。なぜ「それゆえに」かと言えば長田山側地区歩きに関してはヘタにスマホなんかを見て歩くより、曲がり角ごとに律儀に(しかもわかりやすく)貼られている「全山縦走」と書かれた案内表示を見ながら進んだ方がよほどわかりやすいからである。でもそれは後になってからわかったことで、その時にはスマホばかり見て歩いていたから道を間違えた。

そして道を間違えた先には海が見える高台の公園があった。
私はその時、元来た道に戻る前についでだからとベンチで休憩したのだ。そしていっそのこと、この公園をカネロ対クロフォードの観戦場所にしようかと思いついた。
非常食用に持ってきたカロリーメイトをかじりながらNetflixの生中継を再生する。電波状況はきわめて良好。公園も人がおらず居心地が大変良い。

ただせっかく見つけた観戦場所であったが試合が始まるまでにはまだずいぶん時間がかかりそうである。そのあいだにNetflix制作の両者に対する密着ドキュメンタリーを見ていると、カネロって金がありすぎて、私が市場の漬物屋に行って「白菜と、きゅうりと……ナスももろとこかな」みたいに言うノリで90万ドルの時計と100万ドルの時計と140万ドルの時計を買っている。あとカネロって金がありすぎて家に馬と孔雀を飼っている。それでカネロの子供は馬とかラジコンみたいなバギーとかよくわからん乗り物に自由な感じで乗ってるんだけどカネロは「子供にすべてを与えるのが善とはかぎらない」とか言っててさ、虫歯の治療で金がかかったから子供にたまごっちパラダイスを買ってやれなかった私が自分自身を納得させるために念じたのと同じことを言ってたけど、まあカネロにはカネロの苦労があるんだろう。家で孔雀を飼ってる人って村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』に出てくる老小説家だけだと思ってたけど『コインロッカーベイビース』にはでかいワニを飼ってる人が出てたよね。そのワニが高速道路で轢き殺されて……それでカネロが日本円で1億円とか2億円とかの時計をおでんの具を選ぶみたいにぽんぽん買っているその様子をカネロチームみたいな人たちが真面目な顔で見ててさ、大谷翔平選手の横にいた水原通訳もこんな感じだったのかもしれん。

それでなんか公園の居心地が良くて「もう今日のゴールはここでいいのではないか」と思い始めていたのだが、せっかく機嫌よくNetflixを見てたのに同じ公園に小学3年生くらいの女児があらわれて、よりによって私が座っているベンチの目の前にある水飲み場で遊び始めやがったのよ。子供が遊ぶのは子供の自由だけどさ、しかもこの場所はその子の地元の公園だろうからそっちに優先権があるとは思うけどさ、こっちはいまボクシング見とんねんダボハゼ。
女の子が来てから私の頭に瞬時に浮かんだのは、最近ニュースで話題になっている小学校教師による全国ネットワークの盗撮グループ事件である。あれな、まだ全員逮捕されてないけど学校現場ではなかなかインパクトがでかいのだ。自分はP……的なあれこれで学校の先生としゃべる機会が多かったりするのだが、あの事件がどかんと報じられた時の学校現場の空気って相当ピリピリしたものになっていた。そりゃそうだろう。クマとかサメとかが人を襲う事件が報じられるとすべての山にクマが、すべての海にサメがひそんでいるみたいな集団心理になる、そういう現象があるじゃないですか。ああいうのが学校現場(での保護者間)にも当然発生するので、男性教師なんて針のむしろっつうか、現場の先生は大変でっせ。

みたいなのが最近あったので、自分もそのへんはものすごく(教員でもなんでもないが)敏感になっているというのもあり、今ここの場所のこの構図の微妙さ、というのは必要以上に感じてしまう。つまり、日曜日の他に誰もいない公園。中年男はベンチに座ってスマホをかまえている。その目の前にはスカート姿の女児が1人、見た目にきわどいっちゃきわどい無防備さで水遊びをしている。それが世間にどう見られるのか、みたいなことはさすがに瞬時に頭に浮かぶわけで、とにかくいまこの公園にいるのはよくないと思った。

でもよくないっつうか、おまえが後から来たんやからおまえがどっかに行けよ、とは女児に対して当然思った。でもおまえが出ていけよ、などと言えるわけもないので結局私はせっかく見つけた居場所だったけどそそくさと公園を後にして、元の縦走路にかえったのだ。まあどのみち試合はまだまだ始まらなさそうだしこの先の予定も考えるととりあえず一気に鵯越駅までは歩いた方が良さそうである。