
スーパーに行くと「本日カラフトシシャモ詰め放題、298円」という文字が踊っていて「298円ならそれほど安くないのでは?」とは思いつつもやはり「詰め放題」というお得感につられ、気付けばパックを手に持っていた。こういう詰め放題系の物は「商品を入れた上で、フタがきちんと閉まっていないと駄目」のパターンと「(フタは閉まっていなくても)とりあえず商品が容器におさまっていればOK」のパターンがあってこれはどっちなのかな…?と迷ったけれど、迷ったということはつまり詰め放題のルールはどこにも書いていなくて、そこで「よし、書いてないってことはとりあえず商品が容器におさまっていればOKのパターンだろう、たとえフタが閉まっていなくとも」と手当たりしだい詰めまくれる程の神経の太さが自分にあればもっと生きやすいのだけれど、どうしても、フタがちゃんと閉まってない状態の、おもいっきりシシャモを詰めまくったパックをレジに持って行ったら店員さんに「いや〜…これ、フタがちゃんと閉まってないとダメなんですよね…」と突き返されたらどうしよう…(そしてシシャモを突き返された自分は困惑し、そこでおとなしく引き下がるか、それとも「詰め放題のルールを明記しないないそちらにも問題があるのでは?」と交渉するか迷うのだが、世の中の常として、そんな時に限ってレジはものすごい混雑していて、うしろに並んだおっさんやおばはんからきっと私は「このトンマな野郎め。チッ」て感じで見られる(せかされる)んだよなあ…それってストレスだよなあ)と、悪い方に悪い方に考えてしまう。でも難しいのは、そこで「じゃあ、何かあったらめんどくさいから今回はとりあえずちゃんとフタが閉まるくらいにあっさりと詰めておこう」と大人の対応(エレガントなシシャモ収納)が出来る程に自分は成熟していないということで、結局(レジに持っていった時に、何か言われたら)「いやあ、よく見て下さいよ、フタが閉まってないように見えるけど、ほら、(と指で押しながら)ちゃんと閉まるじゃないですか」と弁明できる程度のシシャモの量(フタがあいているといえば言えるし、フタが閉まっているといえば言えるくらいの詰め込み量)を、パックに詰める事に決めて、さて一匹、二匹、三匹、四匹、五匹、六匹……と入れているうちに気付いた。あ、これは、頭としっぽを揃えて入れるよりも、頭・しっぽ・頭・しっぽ・頭・しっぽ、と交互に入れていった方がたくさん入るな、という事に。だからもう一回最初から入れなおして、頭・しっぽ・頭・しっぽ・頭・しっぽ、と入れていったんだけど、さっき頭・頭・頭・頭・頭・頭・頭、と入れていた時と今とでは、一列に並べられる量にまったく変わりがなかった。七匹。頭・しっぽ・頭・しっぽ、と交互に詰めていった方が絶対にたくさん入るはずなのに何故一列に入る量が同じなんだろう?不条理だな、認めたくないな、と思ったけれど、まあどっちでもいいや、いやどっちでもよくない、やっぱどっちでもいいや、と思いなおして、それからは自由に詰めていくことにし、レジをすませ、帰り道、私は田んぼにいたタケオの目の前に行って、わざとパンツが見えるようにしゃがんでさ「ねえ、タケオは原発に反対しないの?私とセックスしたくないの?」て聞いてみた。(40話につづく)