はてなダイアリー平民新聞

創業2002年か2003年、平民金子の元祖はてなダイアリー日記です。

アスパラを銃剣に

冬から春になる一瞬一瞬のことを出来るだけおぼえておこうと思って毎日散歩に出かけ、あちらこちらにあたった日の光を見ている。なるべく止まらないように。歩きながら。頭に思い浮かべる時にはすでに通り過ぎてしまっているその場所。たとえば民家の壁や電柱に。出された大量のゴミ袋とそこにかけられた青いネットに。とめられた郵便配達の赤いバイクに。子供たちのランドセルに。くしゃくしゃになって道路に落ちバスに踏まれてしまった寒椿の花に。ほんの数分前には確かにあったそれらの点景がまとった光のかたち、影のかたち、その柔らかさや固さを思い出しては何度も頭の中で確かめている。歩きながら。揚げ物屋の店先でふとそれは、今去って行こうとする冬の背中に引き金をひこうとする不遜な態度に他ならないのではないかとおびえ、初めて立ち止まり、いま来た道をふり帰って、僕は見た。今朝かじった食パンが車道に隊列をなし、アスパラを銃剣に街を闊歩している冬の光景。そこにもまた光はあふれていたのだ。
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