はてなダイアリー平民新聞

創業2002年か2003年、平民金子の元祖はてなダイアリー日記です。

那覇ミュージック

沖縄に那覇ミュージックというストリップ小屋があって米兵とうすぎたないおっさんばかりの場所だった。写真を撮った頃、翌月からここで働く事が決まっていて沖縄移住の準備をすすめていたのだけれど、紆余曲折あり結局それは叶わなかった。あの頃もし沖縄に移り住んでいたら今ぼくはどうなっていただろうと考える事がある。用意された日当は5000円だったと思う。じゅうぶんやっていけるな、と思った。5000円でたしか15分、彼女たちを買えたのではなかったか。コロンビアから来たという彼女は酔っぱらうと煙草の灰を床に落としそれを素足でつぶしてはM食堂の唐揚げがいかに油っこく辟易しているかという話をした。それなら食べなきゃいいのになと思うのだが彼女は毎日唐揚げを口にし紅のついた骨や肉塊がテーブルの上にコロンと置かれている。すべて幻ではなかったか。昨年、布美枝を連れてこの場所に行くと、予想はしていたのだがやはり那覇ミュージックは跡形もなくなっていた。M食堂もなくなっていた。僕らが年をとるように街もまた少しづつ年をとっていく。今にして思うとたしかにあの唐揚げは油っこかったなと思うのだが、確かめる術はない。あるとき川沿いを散歩しているとスーパーの袋をぶら下げた彼女に会った。明後日の飛行機で帰るんだよ、と言うと彼女は他人の家の庭木からハイビスカスの花をちぎり僕の胸に差した。始まりも終わりもしなかった。確かにあったのは日差しの強さと影の濃さだけで、それはたどたどしい会話以上に、僕らの言葉のようだった。