なんかバタバタしてて、なかなか日記が書けない。三月のはじめ、浅川マキのお別れ会みたいなやつがあったので、新宿ピットインに行った。雨が降っていた。死んでしまったら人は、煙カスになってすべておわりだとは思いつつも、ああ、あの人も死んでしまったのか…ということをしっかりと確認するために傘をさして行った。会場に小さいメッセージカードみたいなやつがあったのでそこにも書いたんだけど、ぼくが浅川マキをはじめて聴いたのは19歳の時。「別れ」という歌がいちばん好きでした。本当のお別れの場に来てそんな事をもうこの世にはいない本人に伝えようとするっていうのもなんだかよくわからない微妙な感じがするのだけれど。でもぼくはあなたの歌う「別れ」が好きでした。あなたとの別れではなく。帰り道も雨が降っていた。タクシーのヘッドライトが路面を照らすのをながめていると、急に煙草がすいたくなった。でもグッとガマンして、とんこつラーメンを食べた。ラーメンが出てくるまでのあいだ、割り箸を手にとって口にくわえ、フハーと息をはいてみるも、もちろん煙は出ない。店内にたちこもる麺をゆでる湯気が、とてもにぎやかだ。
細い路地の古い 階段降りてった
いつもの店の ドアを開けたのだが
誰もふりむかなくて あいつもいなかった
思い出さずには いられなかった
（にぎわい/浅川マキ）
