いつも行ってるコンビニに、いつもいるレジの女の人がいて、ぼくは毎日毎日「56番お願いします」「56番」「えっと、56番で…」と同じ煙草を買うために彼女とレジで相対してるわけなんだけど、この前ついにこちらが何も言わない先から「おたばこですかー、ハイ」と56番の煙草を軽やかに渡されて、ぼくは「あ、どうもありがとうございます(すげぇなこの人…)」と思うと同時に「ウハッ。これでもうこの店ではエロ本の立ち読みがしにくくなるゾ」とも思った。
で、エロ本さすがに読めないなーと思いながら、そのかわりに少年チャンピオンを立ち読みしつつ、こーいう店員さんというのは、キャバクラなんかで働くとたぶんモテるんじゃなかろうか、でもまあ水商売なんかだとこのレベルの気遣いというのは、モテとかそれ以前の、働いていく上でとうぜん必要な作法のひとつなんだろうな、とも考えた。ぼくがなんとなく驚いたのは、キャバクラの女の子からではなく、コンビニの店員さんからこのような対応をされたからである。
コンビニというのは客も店員さんもお互い匿名のまま、機械的なやりとり(客は商品と金を払い、店員はレジを打ち「ありがとうございましたまたおこしください」と言う)だけで目的を達することが出来、その味気なさが逆に、安心感にもつながる、という不思議な場所だ。お互いが機械人間のように無機質にやりとり出来る場所、コンビニ。ぼくのように人付き合いのあまり得意でない人間にとって、そういった徹底的に匿名性を保証される場所というのはけっこうありがたくもある。
たとえばコンビニの店員さん(若い女性)からお釣りをもらう時に、こちらが差し出している手のひらの、上空2〜5センチくらいの場所から小銭を落とされる、というせつない経験は、おっさんならば一度くらいは通る道だと思うけれど、あれの何が腹立たしいかというと、その瞬間お釣りを渡される客(男)は店員(女)から人間扱い(キモいから手に触れたくない…という意味で)されているからで、我々は店員さんから機械のように機械的にわけ隔てなく扱われたいのである。
という感じで、自分としてはコンビニの店員さんに対して別に気遣いを求めていないので、出来れば愛想なくやってくれるくらいのほうがこちらも気をつかわずに出入りできるのになぁ…個体認識されてしまうとなんだか気をつかってしまうなぁ(つかエロ本立ち読みしにくい…)、などと思いつつ、やはり煙草の銘柄をおぼえてくれるということは、相手の女性はぼくに対して恋心を抱いているにちがいない、と直感し、昨日なかば義務感にかられて「つきあってください」と告白すると「わたしでよければ…よろしくお願いします」と即答されたので、驚いた。
昨晩はそのまま23時に仕事をあがる彼女を待ち車でラブホテルに行ったんだけど、いっしょにシャワーをあびながら「きみって堀北真希に似てるなあ」と言うと「あ、わたし真希の姉なんで…」と言われたので、さらに驚きだ。「え、まじで?」「はい。プリクラ見ます?でもお兄さんも誰かに似てますね…えっと…」「誰だろ?水嶋ヒロかな?それはよく言われるけど」「あー!水嶋くん!ほんとだ、すごい似てる!でも水嶋くんよりもっと似てる人がいるんです…えっと…」「誰だろー?気になるなあ。思いだしてよ」「あ!思い出した!平民さんだ!知ってます?平民新聞の平民金子さん!」「え、もしかして世界の?」「そう、世界の!」「平民金子さん?」「平民金子さん!」
「今日のこと、日記に書いていい?」
「はい、ぜんぶ書いてください。わたしもはてなユーザーなんで、ブックマークとかしちゃっていいですか?」
「オーケイ。ワールド・ビッグ…?」
「クリトリス!」
球春の四月。ぼくらの性戯甲子園はこうして始まった。