銭湯のお湯は熱いよりヌルい方が好きなのは湯船につかりながらダラダラと考えごとが出来るからだ。でもお湯がヌルい銭湯てのはあまりないのでアタシは残念だ。生まれ育ったまちである大阪に帰るっていうのはどういう事なのだろうてことを八月中ずっと湯船で考えていた。地理的に大阪に行くって意味じゃなくてハラの底から大阪に帰るという意味なんだけどハラの底ってどこにあるんだろう。アタシは大阪に帰ったことがないんじゃないかという思いにとらわれる。ねえ昨日までいとも簡単にやってのけてた事が朝おきると突然できなくなっていて布団の上に座り部屋で一人途方にくれているというような夢を見るのは別に初めてじゃないんだけれど最近また同じような夢を見たのアタシはギターを弾いていてどうしても大事なメロディが思い出せないンだホラとGのコードを鳴らしてみようとするけれどアタシにはもう簡単なコードの押さえ方すらわからなくなっているそして思い出すのはもし煙草を吸ってからキスしたいんだったら外に出て深呼吸を二回してからとあなたに言われてからアタシは自分のにおいをとても気にするようになりその後律儀に言われたとおり深呼吸を二回も三回も四回もしてそれからあなたにキスをしたという記憶。でも朝方はあなたの方からアタシにせまってくることも多くて一度なんてまだねぼけている時からあなたはアタシの足の親指をおいしそうになめていて驚いたんだあン時は。そのころのアタシは道に落ちているセミの死体を拾ってはひとつひとつポケットに入れて家に帰る頃にはすっかりクシャクシャになったたくさんの死体をぜんぶ窓からほうりなげアタシだけの星空をつくりだすのが好きだった。すべての思い出がクシャクシャになりますように。出会ったひとたちすべての夏の思い出が夜空をてらし出してこのまちが架空のかがやきを取り戻しますように。アタシがあなたに聞きたかったことはひとつだけ。大阪はどこにあるン?あなたは答えるすべをしらないからアタシは今いる場所を大阪と名付けようと思い夜、さびしいまちを妊娠した。ポックリ。ポックリ。パシュリタ。クシャクシャになったセミのまち。うぇあおうん。うぇあおうん。


