さてかなしみはどこから来るのか目玉かよ
記憶も記録も目玉が始まり目玉かよ
ごめんねごめんね言う人の
目玉見るのも目玉かよ
どこまでもみれよ
みれねばきくよ
きけねばふれる
目玉なくとも目玉かよ
Sさん
かなしいねとつぶやく時のSさんの
内側から広がり
眼窩の暗がりへと続く
俺らいつまでもあの頃のまま目玉かよ
杖もって今日もSさんがやって来た
やあ やあ やあ とむかえる
ぼくの目玉かよ
Sさんがいつものようにぼくの顔を触る
目玉ゆっくりなでて親指を
くちびるにもって行き
「煮て食べたいね」
そんなある日の目玉かよ
Sさんは杖を持たずに歩くことを自らの特技であると公言しているがそれは単にぼくが横にいるからだと思う、と言うと、Sさんは、何を馬鹿な、と言って杖をぼくに預け、一人でヨロヨロと歩き出しガードレールにぶつかった。私ね、匂いだけで薔薇の花の色がわかるの、と言うSさんの手をひき、じゃあこれは?と言って白薔薇の前に立たせる。ラーメン一杯賭けようか、と言ってSさんは鼻を近づけ、うん、これは青紫、と答えた。
あほ、白や、白、とぼくが訂正すると、Sさんは、嘘をつくなとムキになる。ウソもなにも、白やがな、ほんまや、とぼくが言うと、Sさんは、昨日までは青紫だったのよ、そんなのどっちでもいいじゃない、と言った。通りを走る路面電車の音に耳をかたむけるSさんを見つめるぼくの目玉。ラーメンでも食べに行こうか。今日はぼくがご馳走しますよ。と、言うと、いや、私が負けたんだから私がおごる、と言って聞かない。
Sさんに