はてなダイアリー平民新聞

創業2002年か2003年、平民金子の元祖はてなダイアリー日記です。

平成ビートニクス

ぼくらは平成のビートニクスではないですか、と言ったきみは早晩帰らぬ旅に出るだろうその頃には僕も綺麗さっぱり消え去って、ゴミまみれの生活に終止符を打つ。朝、物干し竿にあたる太陽の光を二人でうっとり眺めていた。僕はアルコールで、きみは妙な薬を飲んで。初めてぼくの部屋に来た時、壁に貼られたザ・デストロイヤーの古びた写真を見て、きみは言ったっけ。覆面の下の彼の素顔を知ってるかい?彼も昔、詩人だったんだ。ぼくらはいつか、お互いに約束した通り、そのまま二人、おでこにキスをしあい、男は初めて?と聞いたぼくに、昔のことは忘れました、ときみははにかんで答えたんだけれど、ぼくはきみの肛門を懐中電灯で照らしながら、五月の夜に盗んだ線路脇の薔薇の花について考えていた。きみはぼくの髪の毛を触りながら、ねえ、正気に戻れよ、ぼくらは平成のビートニクスではないですか、と言ったんだけれど、ぼくたちは生れる前からずっと正気しか知らないまま、気付けば無様に年をとり、膝を抱えて生きてきた、ゴキブリと同じ、いつか新聞紙で、数え切れない言葉でつぶされてしまう、たわいない存在だから、ビートとはbe-at、今、ここでときめいていること、それはこの部屋に、ぼくたちが生きてきたこの地下の世界に、轟く喧騒、靴底の響き、それはぼくたちがいつか踏み潰される音楽、ぼくたちが生かされ、いつか殺される音楽、靴底の響き、ビート、きみは自分の死ぬ時がわかると言った、高速道路の下、燃える夾竹桃、地下街に響くバイオリン、きみの吐き出す煙草の煙が、夏の日の、腐りかけた、僕ときみの芝居がかった囁き声をすりぬけて、きみの吐き出す煙草の煙が、ぼくの部屋にやって来る、ビート、靴底の響き、そして、きみとぼくはその日、この部屋で初めてのセックスをし、マリファナとお酒にさようなら、女たちにさようなら、過去の思い出にさようなら、きみはぼくの目を見ながら、何度も何度もさようならと言って、安っぽい涙を流し、そして物干し竿にあたる朝の日差しを、ぼくたちはうっとりと眺めていた。前日に降った雨は、まだあちらこちら、たとえばぼくの心や、きみの肛門に残っていて、きみはぼくに死んだ詩人たちの話をしたがり、ぼくはきみの長い脛毛を数えながら、部屋には煙草の煙とモダンジャズが流れ、きみとぼくは、物干し竿にあたる太陽の光をうっとりと眺めながら、昔みた夢について語り合い、今度はきみが肛門をかす番だ、ときみはぼくを押し倒し、天井の木目には煙草の煙とジャズと昔みた夢が染み込んで、アパートは朝の光に揺れ、陽炎は、ゴミ収集車と一緒に、メキシコへと運ばれる。