はてなダイアリー平民新聞

創業2002年か2003年、平民金子の元祖はてなダイアリー日記です。

円熟・高円寺純情太郎


この前、アパートにあたらしい隣人が引っ越してきた。


ちなみにおれの部屋は二階にあって、二階には(たぶんおれも含めて)なんか、どおしょおもないような人たちしか住んでいない。一年の半分くらいを全裸のちんぽ丸出しで過ごす人(id:heimin:20040710:p2)とか、部屋の中で自転車をこぎながら始終うなってる礼儀正しい青年(id:heimin:20050716)とか、部屋の中をありえないくらいの工事用ヘルメットで埋めつくしてるゴミおじさんとか、扉のない部屋で正座したまま動かない即身仏みたいな人(id:heimin:20050430:p1)とか、まあそんなカンジの、(遠くから眺める限りにおいて)捨てがたき人々(ジョージ秋山)ばっかりだ。


で、新しく入ってきた隣人(仮名:高円寺純情太郎)であるけれど、高円寺は、アパートに入居したその日の昼さがり、唐突に、下駄箱にある住人の靴を一つ一つ目の前のマンションにある植え込みに放り投げていく、とゆう、きわめて解釈の困難な、前衛的な行動をとった。その時おれは部屋で寝っ転がって井伏鱒二の詩集を読みながらノンキにくつろいでいて『ハルノネザメノウツツデ聞ケバ トリノナクネデ目ガサメマシタ』*1みたいなカンジだったんだけど、「ポン」「ポン」「ポン」てゆう靴が投げられる音を聞いていると、ああ、また愛すべき人が入ってきたものよ、春だねえ、なんて思うと同時に、だんだんとハラもたってきたんで、部屋を出て様子を見に行った。


で、この時におれが見たのは、例えるならば近所の隠居した年寄りが腰をかがめて庭木にジョウロで水をやっている瞬間のような、見る者を安らぎにつつみ込むおだやかなる完成された風格、思わず「こういうのって、なんかイイナ・・・」なんて癒されてしまうような落ち着いた自然体の雰囲気でもって、公園で優しく鳩にエサをまくがごとく、植え込みにアパート住人の靴を投げ入れてる最中の高円寺純情太郎の姿で、おれがその瞬間に、(全然関係ないけれど)キリンの発泡酒『円熟』におけるコピー「この味を出すのに11年かかりました・・・・・・」とゆうやつを思い出したのも無理はなく、それくらい、下駄箱から靴やスリッパを一つ一つ丁寧に放り投げている彼の姿はある種の貫禄と慈愛に満ちていて、美しかった。



アパートの下駄箱と、そこから見えるマンションの植え込みの写真。
純情太郎はここで何を思い、何を見つめていたのだろうか。
きっと、おれには見えないものが彼には見えていたに違いない。
純情太郎はちょっとおかしな青年だから、この話は続くかもしれないけれど、なんとなくめんどくさくもなってきたので、続かないかもしれない。

*1:厄除け詩集『春暁』井伏鱒二