はてなダイアリー平民新聞

創業2002年か2003年、平民金子の元祖はてなダイアリー日記です。

或る阿呆の一生


撮ったことすら忘れていた随分昔の画像がパソコンのハードディスクに残っていた。
これはおれの部屋の、(廊下をはさんだ)お向かいさんの部屋に貼られていたものである。はり紙の内容はといえばどれも「家賃を払え、払わないのなら退去させる」みたいな事が書いてあるだけであるが、大家が粘着質なために、ひと月ごと、滞納が重なるたびにどんどん増えていくのである。赤マジックで書かれているためか、けっこう賑やかとゆうか、壮観であった。


ちなみに、どう考えてもA君(お向かいさん)にとってはかっこ悪い事このうえないこの貼り紙であるが、もし一枚でも扉からはがせば、すぐさま「家賃を払わないのに紙だけはがすとは何事か」みたいなはり紙が、またまた赤マジックで大家によって貼りつけられてしまうのだ。

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滞納も半年をすぎた頃のこと。「二週間以内に全額支払う事。さもなくば扉を撤去する」(「扉」の文字の横に強調の二重線)なる新しいはり紙が貼られた。そしてそれからちょうど二週間後、宣言通り、大家によって扉は撤去されてしまって、ある意味、非常に開放的な生活空間ができあがった。しかしこおゆうのはまあオープンカーみたいなもので、夏は涼しくてよいんだけど、冬場は当然つらいのだろう。A君は、(もっと他に方法があると思うのだが)なんと部屋の畳を一枚ひっぺがして、それを扉がわりとした。大家も予測不可能であるが、A君の行動もまたおれにとっては予測不可能であった。


そして最初のはり紙から既に一年近くたっていたと思うのだけど、「一ヶ月以内に全額払わなければ荷物ごと今度こそ強制退去させる」(「今度こそ」の横に強調の二重線)とゆうのが貼られて、ちょうどそのXデイ、おれは仕事が休みであったので部屋にいて、たぶん酒でものんでいた。昼過ぎ、階段をにぎやかにのぼる音がきこえるとともに、「ヨシャ、ヤッタルカ!」とゆうかけ声がきこえて、業者数人によるA君の部屋強行突破、ならびに荷物の強制処分がはじまった。


臆病なおれは興味シンシンであったものの様子をみるために部屋から出る事は出来ず、「ナンジャコリャー」「ケモノの巣ダネ」「病気にナッチャウヨ」とかゆう業者の感嘆のセリフを、寝転んできいていた。そして何時間かがたち、やっと荷物を全部運び終えたのであろう、アパート前に止められたトラックにエンジンがかかった。おれはそのエンジン音で、自分がいつのまにか眠ってしまっていた事に気づいた。部屋には西日がさしていた。


その夜、西友に酒のつまみを買いにいった。そして袋をぶらさげて、アパートの階段をあがり、部屋の前まできた時におれは、扉も荷物も、文字どおり何もなくなってしまったお向かいの部屋に、ぽつんと正座しているA君をみた。