(「ぴんぽんぱんふたり話」瀬戸内寂聴・美輪明宏 集英社〜ISBN:408775295X)より
美輪 (前略)それからも、着ているものについてはよく言われました。私がビジュアル系のファッションで「メケメケ」を歌ったときも、三島さんは、「君の歌は天才だと認めるけれども、その格好は天才とは認めない、天災だ」と。
瀬戸内 自分だって、変な格好をするじゃないのね(笑)
美輪 いや、ご自分はまだ背広にネクタイだったんですよ。あれは多分昭和三十三年(一九五八)ぐらいかな、新宿の「フクワ」というバーで一緒にダンスを踊ったことがあるの。
そのときの三島さんも背広だったけれど、当時はずんどこズボンにパットの背広時代だから、肩から胸にかけてパットがいっぱい入ってたの。で、私が、「あら、パット、パット。三島さん、中身はどこに行っちゃったの?行方不明だ、大変、捜索願いを出さなくちゃ」と言ったの。そうしたら、真っ青になって怒っちゃってね。あの人、怒ると、こめかみにピーッと青い筋が入っちゃうの。それで、いつも冗談を言ったら、冗談で軽いジャブを返してくるのに「おれは不愉快だ、帰る」と言って、お金も払わないで帰っちゃったんです。
〜中略〜
「フクワ」の一件があってから、ずっと音信不通になってしまってね。ところが、半年以上たったころ、いきなり電話で後楽園のジムまで呼び出されたんです。しかも朝。私にとっては真夜中。「かんべんしてくださいよ」と言ったんだけど、「いや、すぐ来たまえ。来るべし」ときかないの。しょうがないから後楽園まで行きました。そうしたら、ボディビルやってるの。それで「どうだ」と言うから、まだあまり筋肉はついてなくてそれほどたいした身体になってはいなかったけど、私、ほめました(笑)。
すると、また私の着てるものをぼろくそに言うんですよ。まあ、私も大して地味なものは着てませんでしたけど(笑)。で、「でもあなただって、ほんとうはしたいおしゃれや、お召しになりたいものが他にもあるでしょうに。どんなおしゃれをなさりたいの?何を着たいの?ほんとうのことをおっしゃいよ」と聞いたら、もじもじとジーンズと革ジャンを着たいとおっしゃるじゃありませんか。で、私は、御徒町まで一緒に行ったんですよ。ジーンズと革ジャンを買いに。瀬戸内 じゃ、三島さんの最初のジーンズは、美輪さんと買ったのね(笑)。