「先生、養生してください。」
太宰さんはすかすように私の顔を見た。
私は両手で膝をきつく握り、とぎれとぎれに口ごもりながら、
「ぼくは、なんだか、先生が、ほんとうに死なれる気でいるんじゃないかと、なんだか、
そんな気がして・・・・・・先生、養生してください。」
太宰さんは、なお無言で私の顔を見つめていた。
「みんな、心配してるんです。ぼくなんかより、ほかに、もっとみんな心配してるんです。
だけど、先生に面と向かって言うのが、どうも、なんだか・・・・・・」
つと太宰さんは顔をそむけた。唇のはしがかすかに歪んだ。その眼が小さくまたたき、
いきなり太宰さんは立ちあがった。すりぬけるような身のこなしで部屋を出た。姿がかくれ、
廊下にたたずんでいる気配。圧し殺しているような、低い泣声を、私は聞いた。
三鷹に太宰治を訪ね自分の書いた小説を読んでもらった学生時代からはじまり果ては失踪した
太宰の捜索、そして遺体の発見まで、あまりにもふかく太宰と付き合った、・・・とゆう言い方は
正しくない、あまりにもふかく太宰によりそった野原のおっさんの書いた含羞の恋文。
この本が最近いちばん素晴らしかったので未読かつヒマジンのひとはぜひ読んで下さいまし。
おれはとゆえばいま同じ作者が書いた檀一雄の伝記を読んでおる次第。