はてなダイアリー平民新聞

創業2002年か2003年、平民金子の元祖はてなダイアリー日記です。

部屋を片付けているとメモが出てきた。
それは幸田文の小説「髪」、の、気に入った文章を書き写したもので、
二十歳前後の俺はこおゆう文章がすこぶる好きであった。
んん、今でも好きなのだけど。
内容は完璧に忘れてしまった。とりあえず、主人公が、母親の死に接するくだり。

ながいつながりだった。それが、死んで、断(き)れて、私だけがのこった。す
ぽんとした、へんな気持ちだった。順ならば親がさきへ死ぬのはあたりまへな筈
だけれど、そこんところがどうもすっと来なかった。どうしてははの方がさきへ
死んだんだらう、なぜ私があとへのこったんだらう。昔からきつい人で、なんで
も私のかなふ段ぢゃなかったものを、なんのわけでこんなに脆く折れてしまった
んだか、なんとなく信じがたく腑に落ちかねた。一ツには数年来離れた土地に暮
して会ふ折もなくゐたせいもあろうけれど、死別のかなしみには実感が来ず、遠
い感じばかりがしてゐた。それはなにかに似てゐる感じだった。よく知ってゐる
感じでゐて、なかなかに思ひつかず、日かずが過ぎてから、ああ雪だなとわかっ
た。雪が突然ざざっと、廂をすべり落ちた、あれによく似てゐた。